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執筆者の写真Mariko Watanabe

フランスから来た彼女の情熱


こんにちは。女将の麻里子です。 先日、『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(講談社)の翻訳本が「ある国」で出版されるというお話をしました。 今日は、その続きのお話…。

2014年秋、私たちはタルマーリーを智頭町に移転することに決めた。そんな慌ただしい折に、友人である蒜山耕藝の高谷夫妻から連絡が入った。 「友達の友達で、フランス在住の秋元朋実さんという人が来日されているのだけれど、『腐る経済』をフランスで翻訳したいと言っていて、イタルさんとマリさんに会いたがっている。」 正直、当時は移転準備や『腐る経済』の舞台を移してしまうという不安で、精神的に余裕がなかった。しかし高谷夫妻の紹介だし、わざわざフランスから来てくださっているし、断るわけにはいかない。

朋実さんは大きなまんまるいチーズをお土産に持ってきてくれた。彼女はフランスでオーガニック農家の方と結婚し、小さな子どもを育てながら、夫婦で農業やチーズ作りを生業にしているという。 彼女はフランスの農業や経済の厳しい状況を憂いており、 「『腐る経済』を読んで、これはぜひフランスの人たちにも読んでほしいと思ったんです!」 と熱く語ってくれた。 もちろん、私たちもフランスで翻訳出版されたらとても嬉しいと思った。しかし実際に出版するとなれば、講談社とフランスの出版社で交渉、契約する必要があり、著者がどうこうできる問題でもない。そして朋実さんは翻訳の経験がなく、プロの翻訳家のあてがあるわけでもないという。

「実現には、なかなか難しいかもしれないな…。」

イタルも私もそんな風に思いながら、彼女と別れた。 そしてその後、私たちは智頭への移転に追われ、時が過ぎていった。

それから3年後の2017年秋、突然届いたメールに、私たちは驚いた。

----------------- 渡邉格さん、麻里子さん。大変ご無沙汰しています。秋元朋実です。 具体的な話も無いのに、途中経過をいちいち報告するのも失礼かと思い、ずっと連絡のないままで、申し訳ありませんでした。 『腐る経済』、全文をフランス語に翻訳し、出版社さんにアタックをしていたのですが、今回やっと興味を示してくれる出版社さんが見つかりました。(農作業との並行でなかなか時間が割けない時期もあり、時間がかかってしまいました)。 -----------------

まさか彼女が忙しい子育てと農業の合間に、自力で全文翻訳し、出版までこじつけるとは! まもなく講談社からも連絡が入り、本当にフランスの出版社から打診があったのだと知り、私たちは興奮した。 そして講談社の担当者に、朋実さんとの経緯をお話したところ、彼はこう教えてくれた。

「日本語の、とりわけノンフィクション系書籍の場合、欧米圏で(翻訳出版されるの)はまだまだハードルが高いのが事実。弊社でも文芸(の翻訳)はちょこちょこやっていますが、ノンフィクション系はまだまだです。個人の熱意、大きいです。」

というわけで、朋実さんの情熱と実力に敬服するばかり!!!

そうして遂に、2019年5月27日に発売予定! フランスのアマゾンで予約販売が始まっています。

『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』 フランス語版の題名は、 『Marx et sa baguette』(マルクスとそのバゲット)

朋実さんいわく、 「パンのバゲットと、指揮棒を意味するバゲットをかけている。」

そうです。

ところでこの度、『腐る経済』のフランス語版を出版して下さるのは「Decrescenzo」という出版社。 朋実さんいわく、 「Decrescenzoさんは、主に韓国や台湾などの小説の翻訳出版をされています。エッセイなども時々出されているようで、アジアの考え方を反映する作品ならば、国もジャンルも問わずに扱われているそうです。しかし日本の本の出版は異例で、『腐る経済』が韓国で翻訳されたとお話したら、とても興味をもって頂けました。」

それにしても、2013年に「タルマーリー」という無名のパン屋の本が、講談社という大手から出版される奇跡から始まり…。 その後まさか、アジア各国で翻訳されるとは…。 更にこうしてフランス語訳してくれる女性があらわれ、韓国でのベストセラーがフランスでの出版に繋がるなんて!

人生、面白すぎますよ!!!

さあ皆さん、フランス語が読めるお友達にぜひ、 『Marx et sa baguette』de Itaru WATANABE をご紹介下さい。 どうぞよろしくお願いします!!!

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