境 晋太郎 Shintaro Sakai(パン製造マネージャー)
7年間苦労を感じたことはない
ここにしかないものを学ぶ
修業の日々
※インタビュー・記事作成:塩月未希子
2015年からタルマーリーで働いています。
現在はパン製造部門のチーフとして、酵母の調整やパン製造、メンバーの指導を行っています。
タルマーリーで働く前は、北九州でロッククライミングのインストラクターをしていました。妻とパン屋巡りをするのが好きで、一緒に様々なお店のパンを食べ歩いていたんです。
そんな時、ロッククライミングのお客様から、パンが好きならおすすめだよって紹介されたのが「田舎のパン屋が見つけた 『腐る経済』」でした。
本を読んでものすごく衝撃を受けて、自分はタルマーリーで働く、タルマーリーのものづくりをすると決めました。
格さんの講演会に駆けつけ、講演後の格さんに「働きたいです」と伝えました。その後、智頭町へ伺って「ゴールデンウィークが忙しいので手伝いにきてよ」と入社前研修を了承頂きました。
今のような従業員向けのシェアハウスがなかったので、渡邉家に寝泊まりして朝から晩まで一緒の濃密な時間を過ごしました(笑)。
研修期間はひたすら皿洗いをして、注文頂いたピザを焼いていました。
書籍発売や、智頭町への移転をメディアで取り上げて頂いた時期で、毎日たくさんのお客様がいらっしゃっていました。タルマーリー前の橋まで100mくらいお客様の列が続いていて、営業開始から1時間でパンは売り切れ、ピザやバーガーなどカフェメニューは夕方までご注文頂くような状況でした。とても忙しかったのですが、タルマーリーを求めてたくさんのお客様にお越し頂けて嬉しかったです。
入社して1、 2ヶ月はピザ、パン製造を半々くらいで担当していました。その後、パン製造に集中することになりました。
タルマーリー入社までパン製造の経験が全くなかったので、目の前の仕事をこなすので精一杯でした。仕事中の格さんは絶対に声をかけられない雰囲気で、今の格さんからは想像できないほど怖かったですね(笑)。
手取り足取り教えてくれるわけではないので、どうしたら格さんのように、きれいに早く仕事ができるようになるか考えて、格さんの仕事を徹底的に観察しました。
例えば、タルマーリーのパンは水分量が多いので、手にたくさんの粉を付けて成形を行います。格さんは最低限の粉を取って作業するので、麺台やエプロンを汚すことなく、きれいに早く作業ができるとか。
それから、仕事のもらい方を考えました。格さんがしている雑用を自分が終わらせると、格さんが空いた時間に自分に少しずつ仕事を教えてくれるようになって、仕事を移譲してくれるようになっていきました。
忘れられないことのひとつが、生地作りをする中で計量ミスをしてしまい、取り返しがつかないくらい大胆な失敗をしたこと。
申し訳なく格さんに報告をしたら「これを食パンにしよう!」と。なんと、そこから今のタルマーリーの食パンのレシピが生まれました。失敗したところから新しいパンが生まれた嬉しさ、ミスをして凹んだ気持ちのミックスでしたね。格さんはレシピ作りの天才ですね。
格さんは失敗することを絶対に怒らず、挑戦をさせてくれます。これはパン製造だけでなく、タルマーリーの文化かなと思っています。
格さんがパン製造からビール製造に移って、自分がパン製造チーフになりました。チーフになって変わったことは、お店のことを考えるようになったこと。タルマーリーが存続するためには売上が必要なので、合格点を超えるパンを安定して作る必要があります。
タルマーリーのパン作りは酵母が一番大事なので、より酵母の調整に力を入れるようになりました。温度、見た目、味、感覚的なところまで酵母と向き合います。日々状態が異なる酵母、パン生地に対応していく感覚を養っています。同じ波は絶対こないサーフィンをしているような気持ちです。
以前は、目に見えない菌に手のひらで転がされていましたが、今は少しコントロールできるようになってきた実感があります。菌を相手にした不安定なものづくりなので、全ての酵母で理想としたパンが焼けた時はものすごく嬉しいです。
一緒に働くメンバーに対しては、本人が失敗やできないことに気付いて、どうしたらできるようになるか考えられるようにしたいと思っています。
言葉で「あれしろ、これしろ」と言うのではなく、酵母やパン、一緒に働く相手のことを感じ取っていくことが大切だと思っています。
今、一緒に働いている真衣さんはこういうことを自然にやってくれているんですよね。私の背中のかゆいところに気付いてピンポイントでかいてくれる感じ。真衣さんのお陰で、自分はこれまでできなかった別の仕事ができるようになってよい循環が生まれています。すごく嬉しいです。
今は、朝4時頃に出勤して分割・成形、明日以降の仕込み、生地や酵母の調整を行っています。遅くとも15時には退勤しています。
タルマーリーはビール酵母をつかって1週間の生地を仕込むことができるので、毎日の仕込みがありません。パンがおいしいことはもちろん、職人の働き方を変える、負担を少なくするレシピがあるのはすごいですよね。
格さんには「パン製造は肉体労働なので早く体を休めるために、時間内に集中してやる」と口酸っぱく言われています。早くきれいな仕事ができるように、職人として技術を身に付けていくことで、体を大切に、健康に気を配って働けるようになっていると感じます。
タルマーリーでお世話になって、7年が経ちました。ゆくゆくは九州に戻って独立したいと思っていますが、まだ学ばせて頂きたいことがたくさんあります。日々修行、勉強です。
これまで苦労を感じたことはありません。ここにしかないものを学ばせてもらっている貴重な時間だと思っています。
タルマーリーのパンの肝はビール酵母なので、今後はビール製造にも関わりたいです。
それから、タルマーリーの人気商品だった和食パンを復活させたいと思っています!炊いたお米を生地にいれるパンで、唯一無二のおいしさです。他にも、格さんが作ったレシピはあるけれど、まだ製造・販売できていないパンがあるので、メンバーが増えて余裕が生まれたら新しいパンを増やしていきたいです。
Q&A
-
出身地
-
山口県下関市
-
-
得意技
-
特になし、あえて言えば剣道(5歳から大学まで剣道漬け、好きなんだなぁと思う)
-
-
休日の過ごし方
-
釣り
-
-
タルマーリーで好きなメニュー
-
バゲットタルマーリー(成形が難しく、格さんからバゲットタルマーリーの仕事を移譲されたときはすごく嬉しかった!)
-