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執筆者の写真Mariko Watanabe

山陰中央新報コラム「羅針盤」第8回


 地元紙「山陰中央新報」の日曜1面のコラム「羅針盤」の執筆を、タルマーリー渡邉格が担当しております!藤原辰史さん、内山節さんら著名人が順番に執筆、2カ月に1回くらい登場します。


 第8回2022年12月掲載のコラムを、以下に転記します♪(第7回はこちら

 次回は3月12日(日)掲載予定です。「山陰中央新報」購読者の皆さん、ぜひ紙面をチェックしてください♪

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2022年12月掲載


羅針盤 論理の外の世界 マイノリティーから学ぶ

タルマーリー・オーナーシェフ 渡邉格


 先日、「全国の公立小中学生8.8%に発達障害の可能性 文科省調査」とのニュースが流れた。子どもたちに一つのレッテルを張るような動きに、私は思う。数字によって白黒をつける動きによって、グレーの居場所はもう残っていないのか。こうした判断基準はどのくらい先鋭化しているのだろう。

 子どもの頃から、私は集団の空気を読むのが苦手だったので、一人でいるのが好きだった。しかし小学4年生くらいから、一緒に遊んで楽しいと思える二人の友人ができた。一人は表具店の息子で、暴力的で仲間とつるまないタイプだった。もう一人は身寄りのない児童養護施設の子だった。施設の子たちは大きくなると非行に走る傾向にあり、みんな近寄ろうとしなかった。

 私たちは気が合った。腹が減ると畑のきゅうりを拝借したり、空気銃で鳩を撃ちに行ったりし、団地住まいの私には未経験の新鮮な世界を見ることができた。

 三人でレクレーション係をしたとき、「教室内で釣りをする」という企画を考えた。そこで金魚やコイを調達するために近所の池で釣ろうとしたけれど、全く捕れない。ぼうぜんとしていると突然、表具店の子に池に落とされた。と同時に、彼も池に飛び込んだ。「考えるより入って捕れ」という意味だったようだ。それから水中で網を使ってすくいまくると、大量に魚が捕れた。結果的にそのレクレーションは大いに盛り上がった。

 そんなこともあってか、私たちが授業を抜け出して、飼育小屋の死にそうなウサギの面倒を見ていた時も、先生は他の生徒の不平不満からかばってくれた。

 私たちは三人とも、何かに取り組むときに人並外れた集中力を発揮していたように思う。成績表では「落ち着きがなく、忘れ物が多い」と書かれたが、あの頃はそれを「発達障害」と断定されることなく、それぞれの長所をきちんと評価してもらえた。

 明らかに私は、人間関係をうまく築くのが苦手だ。29歳で初めて正社員になり営業職に就いたが、私に営業が向いているわけがない。結局、二年ももたずに辞めてしまった。しかしその後に独立してパン屋になり、自分独自の世界で完結する「モノ作り」という仕事が、私を救ってくれた。

 「おいしい」とか「美しい」という感覚も、資本主義の論理によって画一化してきた。そこから外れたものは「マイノリティー」と認定される。

今のこの閉塞的な日本社会で、論理の外にある大切なモノを拾い上げるために、「マイノリティー」から学ぶことこそ多くあると、私は思う。

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